言葉のベクトル(2022年11月11日掲載)
46歳、4児の子育てをしている父親です。
常日頃、子供達には目に見えるものだけにとらわれず、
目には見えないものも感じて、未来へ、たくましく歩んでほしいと考えています。
先日、杉原千畝夫妻碑前祭が港口公園で開催され、家族で参加させて頂きました。
前日に準備をしている際、翻訳のために事前にスピーチ原稿をご覧になった松下住職が「流石、イスラエル大使。立派な文章だったよ。」とお話されたので、子供達にも聞かせたいと思い連れていきました。
イスラエル大使のスピーチは本当に素晴らしかったです。
眼に力があり、身振りも手振りを交えた熱のこもったスピーチは、英語ながらも、心に感じるものがありました。
言葉は、世代も時代も国家も超えますが、目に見えない言葉を発したものの熱量というのは、その場にいる者にしか感じえません。
戦争が地続きの隣国で起こっている、イスラエル、リトアニア、ポーランドといった国を代表する方々の生の声で、世界に対する思い、次世代への思い、人道の大切さなどを聞けたことは、我が家にとって素晴らしい体験となりました。
「ある国民の特性はその国語に習熟することによってのみ学ぶことができる。国語はその国の魂に内在するすべてを含んでおり、それ故にそれぞれの国にとって最上の投影法なのである。」
精神科医の土居健郎は著書で述べていて、私もその通りだと感じています。
日本語について自分なりに研究していく中で気になるのは、日本人の否定表現の多さです。
肯定的な内容ですら、二重否定を使います。私自身そうですし、日本人の特性だと思います。
動画投稿サイトのユーチューブに字幕機能があり、機能を駆使して討論番組を見るとそれが顕著です。
建設的な話なのに否定表現で溢れていて、感覚的に不安に感じます。
この気持ちを払しょくするには、時の流れは「過去から未来へ」ではなく「未来から過去へ」の、時間感覚の逆転が必要で、言葉を否定が蓄積される過去と捉えるのではなく、「なるほど、そうしなければいいんだ!」といった未来への道しるべという気持ちで捉える感覚、言葉を扱う感覚が日本人には必要だと感じています。
『大半の地球人は、西洋的価値観に洗脳されて、時間は過去から未来に流れていると思い込んでいるけれど、それは違う。
時間は未来から過去に流れている。
江戸時代の時計もそうなっているし、子どもの時は未来から時間が流れていると感じている。
大人になると、何かを決める時に、未来にではなく、過去の失敗で推し量ろうとする。
過去に起こったことのせいで、今の自分があると思い込んでいる。
過去はもう過ぎてしまったことで変えることはできないのに、それで未来が決まってしまうとしたら、生きている意味がしぼんでいく感じがしませんか。
下流にボールを投げても、ただ流れて、遠ざかって行くだけですよね。
でも上流に向かってボールを投げれば、ボールが目の前に来た時にキャッチすることができる。
「時間は未来から過去に向かって流れている」っていうのは、つまり、そういうことだと思うんです。
ボールみたいにハッキリわかるものじゃないかもしれないけど、ふっと向こうから風が吹いてくるみたいな、かすかな予感のみたいなものをキャッチできるかどうかで、今の自分が変わってくる。
未来に向かって、ボールを投げる。そういう気持ちで生きれば、流れにちょっとでも気づくことができるんじゃないか。
かすかな予感をつかまえる。
流さない。
子どもの頃は、誰もがそういう気持ちで生きていた。
過去の失敗で自分を推し量るより、その方がワクワクするし、ずっと正確な気がするのです。』
吉本ばなな著『「違うこと」をしないこと』より抜粋。
吉本ばななさんの素晴らしい文章に続くのはおこがましいのですが、
過去をどのように捉えるべきかと想像すると、未来に向かって投げるボールのベクトルだと感じています。
ベクトルとは矢印で表記される、力の大きさだけでなく、向きを持った量のことです。
未来へボールを投げる際に闇雲に投げるのではなく、過去を見ることで、投げる方向や、勢い、距離などが計れるのではないかと私は感じています。
子供達には言葉を捉える時には、目に見える表面上の言葉だけではなく、
その中に潜む目に見えない熱量や時間感覚なども感じて、様々な事象をつかんで欲しいと考えています。
来たる11月17日(木)から21日(月)まで沼津駅北口、プラサヴェルデ2階市民ギャラリーにて、
イスラエル・ホロコースト歴史博物館制作パネル展「空のない星~ホロコーストの子供たち~」が開催されます。
また、11月20(日)同会場3階大会議室にて、俳優の山田純大さんを講師にお招きして、「命のビザ講演会」も開催されます。(連絡先・966―0125長興寺)
イスラエル大使が仰ってましたが、未来ある次世代の若者に、イスラエルの方々の視点で捉えた過去を感じてもらい、未来への歩みのベクトルにして頂ければと嬉しいと感じます。
皆様お誘いあわせの上、ご覧頂ければ幸いです。


