言葉より深い意味を持っているもの(2024年7月6日掲載)

47歳、4児の子育てをしている父親です。

常日頃子供達には、言葉に溢れた現代社会においても、心と体を大事にする日本文化を忘れずに、様々なものを感受して生きて行ってほしいと感じています。


茶道を学び始めてちょうど1年が経ちました。

5月はぬまづ茶会に参加させて頂き、お茶室で学ぶ稽古と違う、和服姿に野点、水屋仕事と、初めて尽くしで冷静さを失いそうでしたが、時折流れた初夏の風の爽やかさが心を落ち着かせてくれ、とても充実した一日となりました。


茶道の世界には、長興寺の松下住職の勧めで表千家の土井宗達先生のもとに足を踏み入れました。

日常の喧騒から離れた茶室でのひととき。

稽古に集中するこの時間は、私の心を静め、今やかけがえのないものとなっています。

先生にご指導頂き、先輩方の所作を目で学び、自分の所作に取り込んでいく。

型を身に付けて行く過程がとても新鮮で、仕事終わりで体力的に厳しいと思う時でも、稽古の時間だけは大切にしています。


3月に我が家にホームステイしたトルコのエルさんとチェコのアンナさんとは、東京に帰った後も月に1度程度メールのやり取りを続けています。

我が家に滞在中、日本のことをもっと知りたいという彼女達に、私は働くことを勧めました。

個人主義が強い文化の国では他人と息を合わせて働く感覚が薄く、せっかくなら日本らしい目配り・気配り・心配りやおもてなしの精神を日本人と働くことで体感してほしいと考えました。

東京に戻ると彼女らは早速アルバイトをはじめ、充実した日々を過ごしている様子がメールから伝わってきます。


ある日のエルさんのメールには、職場で日本人との会話で感じたことでしょうか、こんな一文がありました。

「日本語会話の中には言葉より深い意味を持っているものがあると思います。

日本の文化について意識を深めれば深めるほど、その意味を理解できるようになってきました。

人間関係について考え、どうすれば円滑な人間関係を作れるかを模索する日本文化は私にとって面白いです。」


私はこの文章を読んで感動し、以下の返信をしました。

「『日本語会話の中には言葉より深い意味を持っているものがあると思います。』

この点に感覚的に気付けるのは、とても良い感性だと思います。


新しい真理にたどり着くプロセスとして、西洋哲学にはヘーゲルの弁証法があります。

正の命題(テーゼ)と反対命題(アンチテーゼ)を統合し、より良い解決策や新しいアイデアを導く統合命題(ジンテーゼ)を生み出します。

この思考は言葉によって抽象的に行われます。

日本語ではこのプロセスを『正反合』と呼ぶことがあります。


一方、日本には『守破離』というプロセスがあります。

これは茶道や剣道の修行プロセスとして有名です。

剣道をするエルさんならご存じかもしれませんが、『守』は師や流派の教え、型、技を忠実に守り、『破』は他の師や流派の良いものを取り入れ、『離』は独自の新しいものを生み出し確立する段階です。

この『守破離』のプロセスは具体的で身体的です。


中でも「わざ」を身に付ける稽古は、単なる肉体の訓練ではなく、心が問われます。

心を込め、心を磨き、邪心を離れ、無心になる。

単なる精神論ではなく、「わざ」が大切で、徹底して体で稽古します。

日本人にとってこのプロセスは文化的に無意識に継承されています。

そういったこともあり、日本人は心を言葉以上に体で表現しているのかもしれません。


新しい真理への追究に、抽象的に論理的に思考する『正反合』と、具体的に肉体的に体現する『守破離』という二つのプロセスを有することは、人生を豊かにしてくれると感じています。

剣道に励むエルさんにも、そういった感覚が育まれると嬉しいです。」


日本に興味を持ってくれている素直で娘のようにかわいい彼女達。

せっかく日本に来たのだから、より良い記憶を残し、帰国しても、日々の生活に日本文化を取り入れて、素晴らしい人生を送ってほしいと感じています。

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