非合理的な楽観(2024年7月19日掲載)
47歳、4児の子育てをしている父親です。
常日頃子供達には、自分の中に生まれたアイデアや希望を大切にし、毎日を楽しんで生きて行ってほしいと願っています。
先日、友人たちの勧めで、静岡県立美術館で開催されたテオ・ヤンセン展を見に行ってきました。
テオさんはオランダのアーティスト。
故国の海面上昇問題による砂浜の消失に危機感を抱き、プラスチックチューブやペットボトルなど、身近な素材を使って、風力で歩行などを行う「ストランドビースト(砂浜の生命体)」を製作し始めました。
物理工学に基づくストランドビーストの動きは、生き物を思わせるほどに滑らかで有機的です。
アートと科学を融合した作品達からテオさんは「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」とも称されています。
実物のビーストたちの造形美も素晴らしかったのですが、実際に動いている姿には心に何かを訴えかける力がありました。
美術館内で動きの解説を受けた後、屋外の芝生広場で動く作品を見た瞬間、子供たちは作品に向かって駆け出していきました。
特に息子が作品とスキップしながら笑顔で並走している姿を見て、テオさんの作品が世界中で多種多様な人々を魅了している理由を実感しました。
作品展では、テオさんによるビデオメッセージが流れており、その中の言葉に大変感銘を受けました。
「最近あらためて最初に作った作品を見ましたが、ひどい見た目です。
見ればわかるとおり、これを作ったアーティストは、どうしてこれがどこかへ行けるなどと考えたのでしょう。
しかし、想像するに、当時の私が考えていたように、なんだって起こりうるのです。
もともと楽観的でしたが、それは、正当な理由のない楽観主義でした。
しかし、この非合理的な楽観が、作品を今の姿へと成長させました。
この非合理な楽観こそが、この世界が必要としている何かなのだと思います。」
私はこの言葉を聞いたときにとても感動しつつ、前日に東京で再会した我が家にホームステイしたチェコのアンナさんに話した言葉を思い出しました。
沼津の新茶を渡そうと府中で再会した彼女はとても元気で、相変わらず優しく我が家の子供たちともコミュニケーションをとってくれました。
東京に戻ってから3カ月、さらに日本語が流暢になっていたアンナさん。
彼女のアルバイトでの様子を聞いて少し納得しました。
アルバイト先に選んだのは、5月から5週連続G1レースが続く東京競馬場内のカレー屋さん。
「日本ダービーの日は凄かった!普段は7人態勢でお店を回すのに、この日は本社の社長さんたちも来て、9人で必死に回したよ!」
彼女が日本人達と息を合わせて働いている姿が目に浮かび、いい経験をしているなと感じました。
チェコに帰ったら、日本の漫画を翻訳して販売する出版社に勤めることが決まっているアンナさん。
彼女は日本の漫画やアイドルなどのサブカルチャーがとても好きなので、その話を聞いてとても嬉しくなり、一昨年亡くなった三遊亭円楽さんの言葉を紹介しました。
「自分が時間を忘れてやってしまうような好きなことに少し社会性を持たせると、この商売は食っていける。」
『お金が儲かるから、人気が出るから』という打算的な考えじゃなくて、本当に理由なく時間を忘れちゃうぐらい好きなことに、ちょっと皆に分かってもらえるような例えができたり説明力が付いたりして、一般の人に分かるようなことに寄せれば、それだけで食べていけるという意味です。
邪な心なく、夢中になって楽しんでいるものこそ大切であり、無邪気に、楽観的に。
アンナが大好きなものが、そして日本での経験がチェコの多くの人達に伝わるといいね。
期待しているよ!
最強の楽観主義者は子供たちです。
彼らは私たち大人の楽観と違い、自分の都合や打算的な要素を含まず、無邪気に「博士になりたい」「プロ野球選手になりたい」「おばあちゃんの病気を治したいから医者になりたい」などと言います。
それは、決して合理的ではありません。
テオさんの『非合理的な楽観』そのものです。
「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」
名経営者、京セラの稲森和夫さんの言葉がありますが、やはりそのスタートも楽観です。
大人として不要な悲観的な言葉を子供たちに浴びせない様に気を付けたいと考えています。
そして、子供たちには自分の中に生まれた非合理的な楽観を大切に、生きて行ってほしいと願っています。
それが子供たちの明るい未来を照らすものと感じています。


