DNAの旅(2024年8月25日掲載)

47歳、4児の子育てをしている父親です。

常日頃子供達には、自分のアイデンティティを大切にしながらも、多様な価値観を受け入れ、心豊かに人生を楽しんでほしいと感じています。


連日の日本人選手たちの活躍に心躍るパリオリンピック。

テレビ越しに感じる歓声溢れる白熱した試合を、よりドラマチックに感じるのは、世界中の人々が人流抑制を伴い、多くの命を奪ったコロナウィルスの脅威を乗り越えたという喜びが背景にあるのは間違いないと思います。

無観客だった東京オリンピックを振り返ると、世界中の人たちが集うオリンピックを開催できること自体が、平和の祭典だと実感します。


日本人選手の顔ぶれも随分変わりました。

つい20年ほど前までは、日本に帰化された選手も珍しかった。

それを考えると、日本も国際色豊かな国になったのだと実感します。

開催国のフランスの選手たちを見ていても感じますが、世界中のそれぞれの国々が多種多様な人々に溢れていくのだろうと感じます。


皆さんは「DNAの旅」という動画をご存じでしょうか?

インターネットで検索して頂けると、この動画の日本語字幕版をご覧頂くことができます。

2016年にデンマークの旅行検索会社モモンドが行ったDNA実験の動画で、全世界で2800万人が視聴したと言われています。


アメリカ在住の16万人の応募者の中から選ばれた67名の多種多様な人々が、それぞれのアイデンティティを語るインタビューから動画は始まります。

登場人物たちは誇りをもって自身のアイデンティティを語ります。

それと同時に、受け入れがたい隣国のアイデンティティを否定します。

その表情は嫌悪に溢れ、個人の感情を超えた民族感情の強さを意識するには十分なものでした。


インタビューを終えると、唾液の採取によるDNA検査に移ります。

そして2週間後、検査結果の報告を受けるために67名は再び集まるのです。

ひとりひとり名前を呼ばれ検査結果の報告を受けます。

報告を受けた人々は揃って、驚きの表情を浮かべます。


ドイツを嫌悪し、自身のアイデンティティに誇りを持つイギリス人青年。

検査結果は、イギリスを祖先に持つDNAは30%しか保持しておらず、なんとドイツを祖先に持つDNAを5%保持していたのです。

また、イラク人青年は検査結果を見てこう言います。

「イスラム教徒のユダヤ人です!」と。

検査を受けた67名も、そして動画を見ていた私たちも感じるのです。

現代社会に溢れる過激な思想は幻想であり、自身が受け継いでいるルーツを知れば、「純粋な人種」なんてバカげた考えだということを。


昨年、ふと以前見たこの動画のことを思い出し、私もDNA検査を受けてみました。

結果は100%日本人でした。

この原因はあくまで日本の地球上における地理的要因によるものにすぎません。

以前にホームステイに来たトルコのエルさんが、私の地理的要因から育まれた日本文化の考察を面白がって聞いてくれました。

哲学者和辻哲郎も著書「風土」にて日本文化について地理的要因から述べています。

現段階ではDNA的に100%日本人を祖先に持つ人が我が国に多いかもしれませんが、これもオリンピックの光景を見るたびに、いずれDNAも文化も時代と共に変わっていくものだとも感じます。


夏休みに入り、土井宗達先生からお誘いを受け、茶道の稽古に子供たちを連れて行っています。

稽古の後、車中で子供たちとその日の稽古の様子を振り返ります。

お茶室の設えや使われていた茶道具、先生のお話。

茶の湯は尊敬と謙譲の精神が息づく世界であり、その精神が子供たちにも向けられていたことを伝えました。
「お茶室の中では誰もが平等なんだよ」と子供たちに教えつつ、いつか一緒にその深遠な世界を学んでほしいと考えています。


世界の情勢をニュースで見ていて、単純な理由だけではないとしても、戦争をはじめとした負の連鎖に、自身の客観性のないルーツを巻き込んでほしくないと感じています。

全世界に住む我々人類はホモサピエンスという一つの種族であり、「DNAの旅」の動画でも出てきますが、広義で従兄弟同士です。

人間は、異なる文化や背景を持ちながらも、同じ地球の上で共に存在できると信じています。

子供たちにはこのことを忘れずに、お互いを理解し尊重し合うことで、平和で豊かな未来を築いていってほしいと願っています。

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