時間と記憶(2022年9月30日掲載)
45歳、子育て中の4児の父親です。
常日頃、子供達には蓄積した記憶を糧に、失敗を恐れず未来に向かって進んでほしいと考えています。
9月21日はWHO(世界保健機関)が制定しました世界アルツハイマーデーです。
この日を中心に9月は世界アルツハイマー月間ということで、世界中で認知症の啓発活動が行われています。
先日わが母校である原中学校でも1年生を対象に認知症サポーター養成講座が行われ、私も認知症サポーターキャラバン・メイト(講師役)として参加しました。
認知症について講義を進めていく中、私はいわゆる介護専門職ではありませんので、
チームオレンジの仲間でもある、元ケアマネージャーの方々や民生委員の方々のお力を借りて、
認知症介護にまつわる生(なま)の体験談などを伝えることで、生徒たちに現実的な感覚をつかんでもらえるよう努めました。
生徒たちにはグループワークで認知症をより身近に感じてもらったあと、最後に私たちからのメッセージとして「時間」と「記憶」についての話をしました。
アイザック・ニュートンは「絶対時間」という概念を生み出し、私たち人類はその功績であるニュートン力学を基礎として文明を発展させてきました。
しかし、宇宙レベルまで空間範囲を広げると絶対時間では計算の辻褄が合いません。
アルベルト・アインシュタインは特殊相対性理論をもって、時間は変化する「相対時間」という概念を生み出しました。
更なる文明を発展させた現代。ミクロ世界の領域において、「相対時間」の概念をもってしても計算の辻褄が合わなくなりました。
現在では、イタリアの論理物理学者カルロ・ロヴェッリが「時間は存在しない」と主張しています。
文明の発展と共に「時間」の概念は変わってきました。
「時間」とは一体何なのでしょう。この感覚は認知症の方と過ごす時間においても、感じることがあります。
食事を終えたばかりの認知症の方から、短期記憶の喪失ゆえに、再度食事の催促を受けることがあります。
一緒に食事をしていたご家族からすれば、食事をしていた時間を喪失した気持ちになることでしょう。
やりきれない感情の行き場と共に、消えた時間。
私たちの脳は「時間」と言うものをどのように認識しているのでしょうか。
脳の中では、「記憶」と「記憶」を結んで生まれた物語を「時間」と認識しています。
それゆえ、結ぶ記憶が存在しない場合や、脳が物語を描けない場合は、私たちの中で時間は成立しません。
では、過去・現在・未来といった時間の概念はどうでしょうか。
記憶と記憶を思い巡らしながら結ぶ過去は「回想的記憶」と定義されています。
それに対し未来は、「展望的記憶」と定義されています。
自分の中にある記憶と記憶を結び、遠くを見渡したときに見えるもの。
それが「未来」です。
物理的に同じ空間で同じ時間を一緒に過ごしていても刻まれる記憶は人それぞれ違います。
記憶も時間も個人的なもので、未来は個人の中にある記憶でしか描けません。
未来は自分自身で描くしかないのです。
もし、未来が描けないのであれば、新しい記憶を取り込む。
本を読んだり、人の話を聞いたり、いろんな場所に出掛けたり。
記憶を積み重ねて、自分なりの未来を描いてください。
そう生徒たちにメッセージを贈りました。
そして、今回の認知症サポーター養成講座もまた、私たちチームオレンジのメンバーが記憶と記憶を結んで展望した未来ですと続けました。
認知症の方やそのご家族がこの地域で自分らしく安心して暮らしてほしい。
地域に認知症の正しい理解や見守る目、思いやりの心を持ったサポートがあってほしい。
それを私たちは行動で表現しました。
生徒たちには、この時間を記憶し、共感してくれたならば、帰宅後に家族に認知症サポーター養成講座のことを話してもらいたい。
ゆくゆくは自分の子供たちにも語ってもらいたい。
そのように行動してくれれば、私たちの願った未来は実現に向けて近づきます、とも話しました。
認知症は誰にでも発症しうる病気で、高齢化社会を鑑みても、地域でサポートしていかなければなりません。
その必要性を実感してもらいつつも、子供達には自分自身の手で明るい未来を描き、歩んでほしいと感じています。
いつでも未来は描け、行動すれば、実現できる。
平均年齢は還暦を超えるチームではありますが、私たちの講座に取り組む姿勢から、子供達に少しでも光を見せられたら。
勝手ながらそのようなことを願ったひと時でした。



