「愛」は「知」の極点(2024年3月8日掲載)
47歳、4児の子育てをしている父親です。
常日頃子供達には、異文化への好奇心を持つことの大切さを伝えています。
異文化に触れ、理解することで、社会を多角的な視点から見ることができ、より豊かな人生を歩むことができると信じています。
今年のお正月のこと。
長興寺の松下住職に新年の挨拶に伺うと、雑談の流れから、東京外国語大学の留学生のホームステイを受け入れてみませんかとお声掛け頂きました。
私自身がかつてホームステイの経験者であり、ホストファミリーとしても経験があったため、この提案に心から感謝し、喜んでお受けさせて頂きました。
我が家に来たのは、トルコから来たエルさんとチェコから来たアンナさん。
二人とも素直で素敵な女性で、子供たちとも打ち解け、温かく交流してくれました。
できる限り日本の家庭や日本文化を感じてもらおうと、私なりに考え立ち振る舞ったのですが、彼女たちと交流を深めるにつれ、もう少し彼女たちの話を最初に聞いてから臨機応変に対応すればよかったと、柔軟に対応することの重要性を学びました。
今回特に勉強になったのは、当たり前のこととはいえ、英語は万能ではないこと。
一カ国一言語が原則で、日本語を勉強してきている彼女らにとっては、英語よりむしろ日本語でのコミュニケーションを望んでいました。
「日本語で話しかけているので、日本語で返してほしいのに、気遣って英語で返してくれることがある。
英語の方が分からないこともあるけれど、どうしても日本語で返してくれないので、あきらめました。」
今は日本酒を作っているタイミング。
彼女らも興味があるとのことだったので、高嶋酒造さんに酒蔵見学をさせて頂きました。
ただ、せっかく彼女らが日本酒造りに興味を持ってくれたのに、「糖」「麹」「酵母」といった単語をスマートフォンで調べたにもかかわらず、英訳して伝えたのは間違いでした。
もちろん、トルコ語やチェコ語でも翻訳できて、スマートフォンが発音してくれます。
英語は万能という先入観が、彼女たちの理解と興味を十分に引き出せなかったことを反省しました。
異文化理解においては、相手の言語や文化に寄り添う姿勢が重要であることを学びました。
2日目の晩は、早朝に蔵見学した日本酒「白隠正宗」を頂きながら、食事をしました。
アルコールも入り、少し話が深くなり、彼女らを遠い異国の地へ送り出したご両親の気持ちを慮る話や、私たち夫婦の子供たちへの思いなども話しました。
彼女たちの気持ちを聞くにつれ、数年後にやってくる子供達が巣立っていく日のことへも思いを馳せました。
3日目の朝。彼女らを長興寺まで、家族で見送りにいきました。
お別れの挨拶をし、バスを見送り終えると、泣きじゃくる息子がそこにいました。
彼女らがとてもいい子で、我が家にとってかけがえのない経験になったのだなと実感しました。
子供達に何かを教える場面では、最後に「好奇心と思いやりの心の大切に、人生を歩んでください。」と伝えています。
好奇心は「知」であり、思いやりの心は「愛」です。
西田幾多郎の哲学において、「知」と「愛」は同一の「自他合一」の概念です。
いずれも、他のものを自分の中に取り入れる行為。
ただその違いは、取り入れる対象物をより人間的に捉えるかどうかです。
知を重ねることで、自然や地域ですらも、より深く人間のように捉えることで、自然愛や地域愛へ変わります。
「愛」は「知」の極点。
好奇心は起点であり、思いやりの心は終点。
様々なことに興味を持ち、知を重ねていけば、自然と思いやりの心は育まれると私は信じています。
本当に彼女たちには感謝しています。
異文化との距離が身近になり、子供たちにもいい刺激となりました。
今週末には、教えてもらったチェコのパン「クネドリーキ」を作ってみようと思います。
夏にまた遊びにおいでと伝えましたが、彼女たちの残りの日本での生活が有意義なものとなるよう、
沼津の地から心より願っております。


