心に種をまく(2024年10月17日掲載)

48歳、4児の子育てをしている父親です。

常日頃子供達には、変わりゆく世の中においても、ありのままを感じ取る心、情感を大切に生きて行ってほしいと感じています。


現在、駿河湾沼津フィルムコミッション『ハリプロ映像協会』主催の『プロから学ぶⅭMアカデミー沼津』を受講しています。

半年間にわたる全6回の講座でプロのⅭM監督から学び、ⅭM制作を実際に行います。


先日、その一環として誠恵高等学校を訪問しました。

誠恵高等学校と言えば、芸術系やeスポーツ部が有名です。

活き活きとした高校生の姿を期待して、放課後にお邪魔しました。


学校訪問では、驚きと感動の連続でした。

誤解を恐れずに言うと、生徒と先生の「ノリの良さ」に感銘を受けました。

興味を持ったことには積極的に取り組み、多くの人を巻き込みながら実現していく姿がとても印象的でした。

学校全体で生徒を後押しする姿勢にも感心しました。


「生徒には、ただ社会の変化を受け入れるのではなく、自らが変化し、変化を生み出し、社会に変化を与える人になってほしい」

この小野理事長の思いを、高橋教頭先生が施設を案内しながら話してくださり、生徒たちがその思いを受け止め、実際に行動に移している姿を見て感動しました。


ロビーには陶芸部の作品が展示されており、昨年の卒業生が二科展彫刻部門に入選したことも聞きました。

ちょうど東京に行く機会があったので、国立新美術館でその作品を鑑賞しました。

陶紙を使った作品は、紙のように薄い素材を用いてマスク状に形作られており、非常に繊細で、焼成中に破損することが多かったと聞いています。

これほどまでにデリケートな素材で一つの作品を完成させる高校生の情熱には心を打たれましたが、これも生徒の努力だけではなく、先生方の献身的な支えがあってこそ実現できたのだと感じました。


生徒の部活動は午後5時までですが、一度ガス窯に作品を入れると、一晩中その様子を見守らなければなりません。

その役割を先生方が担っていることを教頭先生から聞き、大変心を打たれました。

どれだけ素晴らしい作品でも、焼成に失敗すれば水の泡です。

そんな大切な最後の工程を支えるため、先生方が体を張っていることに敬意を感じました。


後日、学校訪問のお礼のメールを送ったところ、教頭先生から返信をいただきました。

「さまざまなコンテンツをご紹介させていただきましたが、学校ができることはあくまで『種火を作る』ところまで。

その火を大きくするかどうかは、生徒たちの創造エネルギー次第です。

少子化の中でも、独自性を武器に今後も努力を続けてまいります。」

教頭先生の真摯な言葉に胸が熱くなり、教師という職業の偉大さを改めて感じました。


15年前に私が公私ともにお世話になった書家で僧侶の佐野丹丘先生が亡くなられた際、奥様から「好きな作品をどうぞ」と言われ、遺墨の一つ「心に種をまく」を譲っていただきました。

その作品をいつも目に入る場所に飾らせていただいていますが、この言葉を見るたびに、丹丘先生のやさしさとおおらかさを思い出します。


この言葉の意味をさらに深く知りたくなり、調べてみたところ、昭和46年に出版された同名の本を見つけ、読んでみました。

この言葉を発したのは、ユニークな法話で多くの人達を楽しませてくださった薬師寺管主の高田好胤さんでした。


「物を作ることも大切やけど、それだけが生産やない。

人の心に種をまき、人の心を耕す。

遠い先祖を神さまとして、近い先祖は仏さまとして拝む。

この心が日本人の国民情操を今日に育んできた。

民族の古典の現場を預かる日本人の一人として、仏ごころの種まき、民族精神の種まきをしたかったのです。」


私が小学生の時に初詣で聞いた高田好胤さんのお話の内容はもう覚えていませんが、その楽しかった印象やまたお話を聞きたいと感じた記憶だけは残っています。

それこそ、心に種をまかれていたのだと感じました。


人工知能AIは、人の気くばりはデータ化できますが、心くばりまではできません。

多くの先達が示してくれた心くばりを感じるたびに、私も子どもたちに何かを伝えたいと思います。

そして、子どもたちには、ありのままを感じ取る心を大切にして、豊かな情感で人生を楽しんでほしいと願っています。


11月4日、プラザヴェルデ3階コンベンションホールにて、杉原千畝夫妻の人道的活動と、夫妻が駐留していたリトアニアの現在を知るイベント「リトアニア・トゥデイ」が開催されます。

第2部では、リトアニアと日本のバイオリニストによる交流コンサートもお楽しみいただけます。

入場料は1000円、高校生以下は無料です。

ご予約・お問い合わせは、電話966-0125まで。

多くの方に足をお運びいただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。

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