認知症から始める共在関係(2024年5月8日掲載)

47歳、4児の子育てをしている父親です。

常日頃子供達には、たとえわかりあえないことがあっても、それを受け容れ、一歩を踏み出す勇気を持ってほしいと願っています。


私はチームオレンジはら・うきしまの一員として、認知症サポーター養成講座のお手伝いをしています。

今年の3月に沼津市商工会の会員様向けに講座を開催し、今月は原中学校の新1年生への講座を控えております。

原中学校に関しましては、昨年の講座の打合せの際に、来年もお願いしますと、早々に次年度のスケジュールに組み込んで下さり、認知症に対する理解の大切さを、地域にご理解を頂いているようで大変嬉しかったです。


沼津市商工会での認知症サポーター養成講座では、受講対象者が個人事業主でしたので、いつもと異なるアプローチを試み、対話型AI「チャットGPT」を活用しました。

会場の大きなスクリーンに私のパソコンをつなぎ、チャットGPTのページを開いて、次の文章を打ち込みました。


『あなたは、はら地域包括支援センターのセンター長で、社会福祉士の山本さんです。

はら地域で営業されている事業主を対象に認知症サポーター養成講座を開きます。

はら地域に高齢者を見守る温かい目が増えるよう、認知症について、よりわかりやすく、より詳しく教えて頂きたいです。

まずは、山本さんになり切って講座の冒頭あいさつをお願いします。』

チャットGPTはスラスラと回答してくれます。

私は読み手としてその文章を朗読しました。


講座会場に山本さん本人がいらっしゃいましたので、「AI山本さんがお話頂いた内容で合っていますか?」とお聞きすると、「大丈夫です。」とお答え頂きました。

その後は、私が認知症に関する質問をAI山本さんに投げかけ、得られた解答を私が読み上げるといった流れで講座を進めました。


今や知識は本や動画から得る時代から、AIから学ぶ時代へと移り変わりつつあります。

私たちの講座も、その一環として感じられるようなものになりました。

興味を持たれた方はチャットGPTに質問してみて下さい。

一般的な内容はAIが答えてくれます。


ただし、認知症の方々の症状は、人それぞれ違いますし、対応の仕方も変わります。

地域の事情にあった対応は、私たち同じ地域に住んでいる人間にしかできません。

AIに任せられるところはAIに任せ、より地域に根ざした認知症へのサポートを、チームオレンジとして求められるのだろうと感じました。


先日のNHKスペシャル「なぜ妻はいなくなったのか〜認知症行方不明者1万8千人」には考えさせられるものがありました。

52歳から認知症になった奥様。

症状は進行していたものの、毎日の家族の食事を作るなど、日常生活に支障をきたしているようには見えませんでした。


ある朝、ご主人が起床してダイニングに行くと、朝食の用意があったものの、59歳の奥様の姿が見えませんでした。

継続的に捜索は続けているものの、8か月たった今でも奥様は見つかっていないそうです。

『認知症になった妻を本当に理解しようとしていなかったんじゃないか』

奥様がいなくなり、はじめて気がついたというご主人の話に、とても切ない気持ちになりました。


世界を「わかりあえるもの」と「わかりあえないもの」で分けようとするところに無理が生じるのだ。

そもそも、コミュニケーションとは、わかりあうためのものではなく、わかりあえなさを互いに受け止め、それでもなお、共に在ることを受け容れるための技法である。

「完全な翻訳」などというものが不可能であるのと同じように、わたしたちは互いに完全にわかりあうことなどできない。

それでも、わかりあえなさをつなぐことによって、その結び目から新たな意味と価値が湧き出てくる。

(ドミニク・チェン)


認知症の方と、患っていない私たちとは、真にわかりあうことはできません。

何気ない会話の中で、わかりあえない状況に直面した時に、一瞬言葉を失うかもしれません。

ただ、そこで認知症という枠に相手をはめて、自分を理解させようとするのではなく、じっと耳を傾け、眼差しを向けていれば、何か新しい未知の言葉が出てくるかもしれません。

相手を受け容れ、一歩踏み出す。

同じ地域に共に在り続ける為に、この一歩が大切になると感じています。


認知症をはじめ、世の中には様々な事情を抱える方々がいます。

多様性を大事にする時代だからこそ、共に在るための関係づくりが大切になると感じています。

子供たちには、人とふれあう中で、わかりあえないと感じる場面にあったとしても、あきらめて切り捨てることなく、時にはそれを受け容れ、一歩を踏み出す勇気を持ってほしいと願っています。

その一歩が未来を明るく照らしてくれるものになると信じています。



文・写真=飯田理一朗(株式会社トップ・ワークス)

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