120年という時間(2023年8月20日掲載)

46歳、4児の子育てをしている父親です。

常日頃子供達には、日常の小さな瞬間を大切にしながら、

長い時間軸で物事を考え、未来を見据えて生きてほしいと願っています。


コロナ禍で大きく変わったことの一つに、テレワークが日常化したことがあると思います。

インターネットを介し、距離の制約を感じずに人々と対面で容易にコミュニケーションが取れるようになりました。


3年前の夏のこと。

テレワークを活用した新たな可能性を探るべく、様々なオンラインバスツアーに参加しました。

島根、香川、スペインのバルセロナ。

現地の添乗員さんの巧みな話術もあり、現地で体感しているような素晴らしい体験を、自宅で感じ取ることができ、とても勉強になりました。


その中でも印象に残ったのは、鹿児島県南九州市知覧のオンラインバスツアー。

現地添乗員さんのスマートフォンのレンズ越しに知覧特攻平和会館を案内して頂きました。

ただ一言に平和について学ぶと言っても、広島や長崎を訪れて感じてきたものとは、全くの異質のものでした。


特攻隊員たちが出撃する前に過ごした薄暗い三角兵舎。

そこで書かれた若き青年たちの遺書。

画面越しの光景と共に、添乗員さんの震える声でその言葉を聞いたとき、私の心が揺さぶられました。


阿川弘之著「雲の墓標」。

玉砕という言葉の裏側にどんな感情が隠れているのか。

さらに学んでいくうちに、国家より郷土への思い、家族や次世代へ託す安寧の願い、その礎として死んでいく彼らの覚悟を知り、私たちはその思いに応えられているのだろうかと深く考えさせられました。


「理一朗君、私は原に疎開していたんだけど、その時の記憶が全くないんだよ。

終戦を原で迎えた。

黒く塗りつぶされた教科書の記憶が強烈で、今まで信じてきたものが崩れていく感覚はあった気がする。

ただ、その時の原を全く覚えていないんだ。」

帯笑園植松家当主植松靖博さんが生前語って下さったことを思い出します。


「昨日まで信じていたものが大きく変わる。だから変わらないものを求めた。」

以前に解剖学者の養老孟司さんが、医学を志したものの、施術や処方した結果とは別に、日々変化していく人間の身体が信じられず、変化しない献体を扱う解剖学の道を進んだという話をしていた。

そして、戦後の日本のモノづくりの躍進の中に、変化しない機械というものに注力したかったという、戦争を経験した日本人の心理があるのではないかとも話していた。

戦争体験を通じて様々な影響を、日本人は受けているのだと感じる話でした。


「No」と言える日本。

昨年末にその言葉を生み出した石原慎太郎氏の半生を描いたドキュメンタリー番組が放送されていましたが、彼の人生も戦争体験が大きく影響していました。

若き日に進駐軍のアメリカ兵に不条理に殴られた原体験から、アメリカや日本の現状に対し複雑な感情を抱いた石原氏。

その後の彼の著書や映画作品、政治活動で、戦争を知らない私たちも少なからず影響を受けているのを感じました。


戦争による影響として、人口の波というのも感じます。

戦後生まれの団塊の世代。

この世代の成長と共に日本経済は復興し隆盛を極めました。


人口ボーナス期という言葉があります。

豊富な労働力を背景に個人消費が活発になる一方、高齢者が少なく社会保障費用が抑えられるため、経済が拡大しやすい時期のことを言います。

島国で内需が強い日本は、人間の流出入が少ないため、人口の波の影響を受けやすい。

それを考えると団塊ジュニアの私たち世代もまた、日本に大きく影響を与える存在なのかもしれません。


日本の少子高齢化が終わりを告げるのが2065年と言われています。

それは団塊ジュニアの私たち世代が日本の平均寿命を超え、そこから先は緩やかな逆三角形を人口ピラミッドが描くからです。

それはまさしく戦争の影響が日本から実生活で無くなった姿とも言えます。


120年。

大きな戦争を乗り越え、その影響が消える人口の凪ともいえる時期に日本が入るまでにそこまで時間がかかるのだと感じます。

またそのタイミングは、子供たちが日本の中心を担う時代でもあります。


その時どんな日本であってほしいか。

どんな郷土であってほしいか。

過去からの様々な人の思いに触れ、影響を受け、約40年後の日本の姿を考えます。

私自身、自分に出来る身の丈から、未来への歩みを進めたいと考えています。


子供たちにも、その先の子供たちにも、日々の生活を大切にしつつ、時には遠い未来をみつめ、そこにある郷土はどんな風になっていて、どんな人達が暮らしを楽しんでいるのかイメージして、身の丈で、その姿を思い浮かべ、実行してほしい。

そして未来へ向け、自分らしく歩んでほしいと感じています。

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